ある街で (その4)
治夫は思いがけなく、快感の一時を過ごした。店主はどのような
放出した陰茎は元の大きさに戻った。いや、放出する前よりも縮んで見えた。
ありったけの精を出して呆けたようになった治夫は、店主のされるままだ。
店主は散髪屋だけに毛髪を扱うのは手慣れたもの。治夫の陰部にシャボンを塗り、ニヤリとして仕事に掛かった。
約束を実行した後の治夫の股間に違和感がある。
何だか頼りない気もする。寒々しいと言っていいだろう、陰茎のまわりを風が吹き抜ける気がした。
下着が直に当たって痛い。そう、有るべきところに陰毛がないのだ。
店主の言う約束とは、「陰毛を貰い受ける」というものだった。しばらくは陰毛が揃わず、恥ずかしくて人前で裸を晒すことはできないが、散髪屋での思いがけない快感の一時を想えば
その後、治夫は陰毛が伸びるのを待ったがいつまで経っても生えてこない。困った治夫は訳を尋ねようと、再び「ある街」を訪れた。
だがどれだけ探しても目指した散髪屋は見当たらない。消沈した治夫はいろいろ手を尽くしたが、股間に黒々とした陰毛はついに戻ることは無かった。そう、散髪屋は永遠に陰毛を貰い受けて治夫の前から姿を消したのである。
「そこのあなた、若い女の散髪屋で頭髪を増毛してもらったって? 何、独特のねじれが有る? だとしたら、誰かが無くした陰毛ではないのか」
「毛ッ、そんな馬鹿な」
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