嘘だまり

ある街で (その3)

2017年02月03日
ある街で

店主は途惑い顔で
「この仕事もそれほど経験が豊富なわけじゃないけど、こんなに硬くなって困るなんて、今までなかった」
 そう言いながら店主は治夫の陰茎を握った。
唐突な行為だったが治夫は途惑いよりも、妙齢の女性に握られているという意識が勝って興奮を隠せなかった。治夫は自分の陰茎がそれほど大きいと思わないが、「硬くなって困る」と言われれば悪い気はしない。
「でもこれだけ硬かったら、ハサミの先が少し触れただけでも血が吹き出しそうで、怖くて仕事が出来ないわ」
 と、困惑気味の店主。
「あと、毛先を短めに揃えるのと、無駄な部分を剃るのが残っているけど」
 店主はどうしょうかと言う顔で治夫を見る。
「次回にしましょうか」
「そうだなぁ」
 ふと治夫は、意地悪を言って店主を困らせようと思いついた。
「軟らかくなればいいんだろう」
「そうね、手で押さえられるほどなら。じゃぁ、軟らかくなるまで待つ?」
「待つよりも、手っ取り早く軟らかくする方法がある」
「それくらいなら知ってるわよ、男の人って溜まってるものを出したら元の柔らかさに戻るのが早いって。じゃぁ待っててあげるから、今すぐに出してもいいわよ」
 困らせようと思った治夫が逆に戸惑うほど、若い女性店主は恥じらうこともなく、さらっと言ってのけた。
「あなたの見ている前で、それも、自分で?」
「私に手伝えって言うのかしら」
 店主は一瞬、顔を背ける。
「その方が手っ取り早く済む。何なら、あなたの裸を見せてもらってもいい」
 治夫は言い過ぎたと思ったが、いままでの話しの経過が治夫を大胆にした。
「男の人って仕方がないわね。ここは散髪屋だから裸は見せられないけど、仕事を早く終えたいから出すのだけは手伝ってあげる。だけど、こちらの言うことも聞いてね」
 まわりには誰もいないのに店主は治夫の耳元である事を囁き、約束させた。
 治夫はうなずく。

関連記事
素姓乱雑
この記事を書いた人: 素姓乱雑
Address:富山県南砺市城端