嘘だまり

何処(いづこ)へ ‐その10‐

2019年01月27日
嘘だまり 0
 雷光と雷鳴がすさまじい。雷光と雷鳴が神の怒りを表すならば、神が行き来する道を塞いだ老人と翔司に向けられたものか、それとも、野心を持つ肖造への非難だろうか。
「翔司、思い出してくれないか。嘘だまりを作る手立ては他にもあるはず……」
 ショウゾウを助け出したい老人は、執拗と思えるほど、翔司の記憶を引き出そうと試みた。
「神の拵える嘘だまりは得体のしれぬ大きなもの。人間が言う(宇宙)も神が拵えた嘘だまりの一つ。その宇宙にいる我々は、神がその人その人の喜怒哀楽を描いた小さな嘘だまりの中で日々を送っているに過ぎぬ。我々は神と違いたやすく嘘だまりを作ることはできぬが、お前さんがショウジならば必ずや嘘だまりを司ることができるはず」
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 肖造は、親子を守るはずの、嘘だまりで覆った平屋の家を閉じ込める空間と化し、神の目が届かぬ今、嘘だまりを剥いで野心を露わにした。手段を選ばぬ肖造から目が離せない。
「翔司、贅をつくした生活に溺れ、破滅に向かう愚かな人間どもを救わんとする写狂老人など放っておいて、私と一緒に嘘だまりを操り、宇宙を支配しましょう」
 ふいに肖造の声が、翔司の頭の中に浮かんだ。
 ハッとして辺りを見回したが隙ができたものか、先ほどまでいた肖造の姿が見えない。翔司は肖造を探して平屋の家の玄関口へ駆け寄った。


 翔司の頭上辺りで、天空を覆う分厚い雲が宇宙を飲み込むように渦巻いたのが不吉の始まり。
 激しい風と雷鳴までもが渦に飲み込まれたのか、辺りを奇妙な静かさが支配した。不安に駆られた翔司が上空を仰げば、まばゆいばかりの閃光が、渦巻く天空と平屋の家を繋ぎ、大地を揺るがし、耳をつんざくような雷鳴が轟く。
 翔司は、閃光に染まった鮮やかな時空が歪むのをはっきりと見た。合わせたように懐で、いままで動きを止めていた老いて見えるカメラが息を吹き返したのか、尋常でない動きを繰り返した。火の側にいるわけでもないのに、翔司の後頭部辺りに「チリチリ」と焼けるような痛みが生じ、体が炙られるように熱い。
 
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