嘘だまり

何処(いづこ)へ ‐その8‐

2019年01月13日
嘘だまり 0
 老人はショウジたちのいる平屋の家を嘘だまりで覆って隠した。その嘘だまりが手も無く破られようとしている。老人はそうと知って、「ありえないことじゃ」と呻いた。
 立て続けてしてやられただけに老人の受けた衝撃は大きく、更に衝撃を与えるのは酷。とっさに翔司は、変わり果てたカメラを老人の目に触れないように懐へしまった。
「ふふ、あの泡のような嘘だまりを消すなんてたやすいこと。拠り所とする時空の歪みさえ無くしてしまえば、時間の流れと共にどこへでも吹き飛んでしまう、たわいのないもの」
 平然と言ってのける肖造。 
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嘘だまりを剥がして、な、なんとするつもりじゃ」
「老人には先ほども言ったはず、嘘だまりを作れるものは一人でいいと」
 肖造は睨みつける老人をものともせず、ふてぶてしく言い放った。普段は表に出さぬ酷薄な一面を見せつける一言に、老人はいかんともしがたく怒りに唇をわなわなさせた。
「神を畏れなくなった人間は、戒められた内容を子孫へ伝えるのを怠ったばかりか、神が埋めたものを次々と探しあてて掘り出した。そのため、重力の均衡が破れた地球は悲鳴を上げ、いたる所でうねりを起こし、掘り起こした大地は荒れ果てて乾き、撒き散らした《害》で大地は汚れ水や大気まで汚れて、育む作物に悪い影響が及ぶ。だがそれらは人間自らが招いたこと」
 翔司は、病院で男から似た内容を聞いたすぐ後で、折悪しく起きた地震に、「このままだと大地は治まらないのではないか」と不安に駆られた。
 思い出した不安を翔司は唾と共に飲み下したが、喉につかえて残った。
「いつまでたっても懲りない、贅をつくした生活に溺れてしまった人間に、あなた方は温情をほどこすつもりのようだが、すでに神さえ見捨てた人間が元の質素な生活に戻る見込みはない。ならば、嘘だまりの世界を構築して、懲りない人間どもをしもべとする。操るのは勿論、嘘だまりを作れる私だ」
 肖造は杖を振り上げて、自らの構想で酔いしれたようにまくし立てた
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素姓乱雑
この記事を書いた人: 素姓乱雑
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