嘘だまり

何処(いづこ)へ ‐その2‐

「居所の分からないショウゾウを探すのに、なんで平屋の家の広場へ?」
「わしは病室での話しのやり取りで、『あの小童こわっぱ、生意気にも、鶏に驚く我々の足もとへカメラを向けてきた』、と聞いて、もしやと思うことがあるのでな」
「もしやと思うこと? 小童というのはショウジでしょう?」
「そうじゃ、まず言っておくが、ショウジは体や言葉つきなど幼いが並みの小童ではない」
「あの、いたいけな子が?」
 あの子のどこが普通の子と違うのだろうか?。翔司はカメラの「目」となってショウジの姿を見ているだけに信じられない。
 
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 老人は翔司が持つカメラに目をやり、
「前にも話したように、ショウジはそのカメラと大いに関わりがある、生みの親と言っていい。その話はさておいて、病室での話しで気が付いたのじゃが……」
 老人は遠くへ視線をやり、記憶をたぐり寄せながら話を続けた。
「わしは、ショウゾウの叔父と名乗る男が平屋の家に来た日、ショウジはショウゾウを困らせるためにカメラを勝手に持ち出したと思い込んだのじゃが、『ショウゾウにカメラを向けた』 となると……、ショウジの特異な本能で異変が起きることを予知し、ショウゾウを逃すためにカメラを持ち出したのではないかと思い直したんじゃ」

――ショウジがカメラを男の足もとへ向けたのは、カメラの別の機能を使うためではないか。そのため「目」の役割は機能させることができず、わしはその時の様子を見られなかった、そう考えれば、つじつまが合う。そこで、男にカメラを向けたカエデの近くを調べればいい―― 。老人は解き明かした。
 雲行きがさらに怪しくなり、広場に砂埃が舞い上がった。
 何もないように見える広場のどこに、嘘だまりで覆って隠した平屋の家があるのか? 平屋の家にいるというショウジと楓はどこにいるのだろう? 翔司はカメラの「目」となって見た、母と子のようなほのぼのとした雰囲気を思い浮かべた。
 平屋の家があると思われる方角から、物音ひとつ聞こえない。鶏が数羽いたはずなのに鳴き声も聞こえなかった。
 老人は翔司からカメラを受け取り、カエデの木の近くをカメラで覗いて歩いた。翔司はカエデの下で老人の動きを眺める。
「やはりな!」
 時空の落とし穴である裂け目が見つかったのは、翔司が全身を光で貫かれ、辺りが歪んだような違和感に包まれた場所。
「思った通り、 ショウジは拵えた時空の落とし穴に、ショウゾウを逃している」
時空の裂け目では時が流れていないのか、翔司の「目」に見えたのは、落ちた時の驚いた姿そのままのショウゾウ。
「お前さんをカメラの中へ招いた時、ここいらをもう少し慎重に覗いていれば、気が付いただろうに……」
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素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

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