嘘だまり

何処(いづこ)へ ‐その1‐

2018年11月25日
嘘だまり 0
「1999年の人類滅亡が遠のいたとしても、この先、神の怒りはどうなるのだろうか?」



- 何処いづこへ -

「難しいことじゃ。神さえ嘆く、人間たちの浪費癖をそうたやすく正すことができんからの。破綻まで行き着かないうちに神の怒りに気づき、浪費を止めて神に救いを求めれば、或いは光明が見えるかもしれん。じゃがそれと引き換えに、神に重い代償を支払わねばならんじゃろう」
 翔司の脳裏にショウゾウに扮した男の言葉が次々とよみがえる。

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「人間たちは、水や空気、土から育まれた作物、僅かな獲物、そして地上に現れた僅かなそれらで満足して、神を畏れながら生きていけばそれでよかった」
「重力の均衡が破れた地球はいたる所でうねりを起こし、掘り起こした大地は荒れ果てて乾き、撒き散らされた〔害〕で大地は汚れ、水や大気まで汚れて育まれる作物に悪い影響を及ぼすのです」
「いつしか人間はうねり狂う大地、定まらない風や雨、気温などに怯えなければならなくなりました。神を畏れなくなった人間はそうなっても戒められたことに思いが至らぬのか、諸々のものを地中から掘り続けて止めようとしない」
 自分たちの立つ大地は確かなようでいて意外と不安定でもろい。人類は自分たちの足元を掘り尽くした末に崩れゆくのだろうか。
「われわれは神に対し、間違ったことをしでかしたのでは?」
「間違っていたとしても、今さら元に戻してやり直すことはできん。しかも今は、神の通り道を塞いだことで救いを求める機会が更に遠のいた」
 翔司は、「人類滅亡」が無くなるのではという期待を込めて聞いた。
「道を塞いだことで神の行き来が途絶えるのでは?」
「それはない! ここにある道は塞いだが神は必ず、別の地のどこかで新たな道を速やかに設けるはず。意にそぐわない人間たちを断罪しなければならんからのう」
 翔司からカメラを受け取った老人は立ち上がって、レンズの先を谷に向けていった。
 カメラと離れていても目の役割をこなすことができる翔司はファインダーを覗かなくても「浮かび上がる像は何か」が分かった。老人が確認している物は、谷底に生じた時空の裂け目に落ち、影響力を失った岩だ。
「ゆっくりしておられん。神の手が伸びないうちに、ショウジをどこかへ移さねばならぬ。まずはショウゾウを助けに行こう」
 不吉なことが起こりそうな予知を孕み、再び、雲脚が速くなった。
 翔司と老人は広場へ急ぐ。
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素姓乱雑
記事作成者: 素姓乱雑
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