嘘だまり

見えない敵 ‐その10‐

「わしはな、人は心の中にも〈時空〉を抱え込んでいるのではないかと思うことがある。その時々の心の働きが質量となって抱え込んだ時空を歪ませ、本人も気づかぬうちに流れる時間の〈早やさ〉を変えているのではないか……と。つまり、その時々で流れる時間の早い遅いは一人ひとり感じ方が違うということなのじゃ」
「……」
「早い、遅いと感じる時間、それを人間は時計というものを拵えて等分に刻んでいるが、その刻んだ時間に人間が振り回されているような気がするのは、わしだけじゃろうか。」

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「でも、今の時代は個人が感じる時間の早さよりも、全世界で等しく時間を刻むことのほうが重要。今の秩序だった社会は等しく刻んだ時間の上で成り立っているのだから」
「便利のようで、不便な世の中になったものじゃ。」
「そうかもしれませんね。時間に縛られない人たちの姿を見ると心にゆとりがあって、うらやましいと感じることがある」
「時間に縛られた人間は賢いのか、それともそうではないのか」
 二人を守った嘘だまりは、いつの間にかどこかへ消えて、二人は何ごとも無かったように、草原に並んで腰を下ろしていた。あれだけ激しかった流れが止んで柔らかな暖かい日差しを浴びていると、老人の話がのんびりと聞こえる。
 カメラが小さくあくびをした。
「さて、わしらは神が行き来に使う道は塞いだ。これで1999年の人類滅亡は遠のいたが、人間たちはこの先、険しい道を歩まねばならぬの」
「えっ! では、『わしとお前さんで一説を壊わす』 という話は本当だった?」
 過去へ迷い込んだ翔司は老人と共に神が行き来に使う道を塞ぎ、未来を変えたことになるではないか。翔司は神に背いた思いに駆られておびえが走った。
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素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

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