嘘だまり

見えない敵 ‐その8‐

 突然、翔司の胸にあるカメラが鋭い光を発した。
 嘘だまりの壁を通り抜けた光は二人をいいようにいたぶっていた流れを断ち切り、それを境に嘘だまりを捉えていた力が急に緩んだ。解き放たれて崩れるように座り込んだ翔司と写狂老人は、断たれた流れのそれぞれがぶつかりあい、砕けて霧散してゆく光景にただ唖然とするだけだった。
usodamariSC_1761.jpg
 すぐに落ち着きが戻った。
「どうやら、我々の動きは前もって神に知られていたようじゃな」
 老人は息を喘がせながら言った。
「苦しめた挙句に、嘘だまりごとどこかへ流そうとしたようですね」
 翔司も息が荒い。
 あとわずかの力が加われば、嘘だまりはちぎれただろう。嘘だまりは押さえた岩から外れてすさまじい流れに攫われたかも。そうなれば二人は時空のどこかで「塵となって漂っていた」と、老人は言う。 まさに危ない所だ。
 ふと翔司は二人を救ってくれたカメラの雰囲気がおかしいと気付き、胸にあるカメラに手をやれば異常に熱い。それだけに先ほどの発光は、自らの危険を顧みず持てる力の限りを尽くしてくれたと分かり、翔司は涙声になるのを抑えきれないままに聞いた。
「大丈夫だろうか?」
「熱が下がって、冷めてくれんことには何とも言えんが……、持てるエネルギーを使い果たしていないか心配じゃ」  
 カメラがすぐに使えないからと言って何もしないでいる暇は無かった。恐怖の大王が降るという1999年7の月が迫っている。 翔司と老人は岩の状態を探った結果、岩は谷に向かって大きくかしいでいた。
関連記事
素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply