嘘だまり

見えない敵 ‐その7‐

「あっ‼」 「うわっ‼」
 翔司は怯えてすがりつくカメラを咄嗟のうちに懐へ入れ、手で押さえて衝撃から守った。次の瞬間、嘘だまりを使って不安定に傾いていた岩が衝撃を受けて大きく揺れ、翔司は岩に弾き飛ばされた。
 嘘だまりは飛ばされた翔司を抱えて細長く伸びる。危うく岩に押し潰されそうになった老人は必死で身をよじって避けたが、伸びる嘘だまりは老人を岩に張り付けた。
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 岩を取り巻く激しい流れは伸びた嘘だまりの先にいる翔司を容赦なく翻弄し、張り付けた老人に手控えすることなく突きあたる。
 激しい流れは捉えた二人をいいようにいたぶった。
 息が苦しくても身動き一つできない翔司は、カメラがいつの間にか懐からはみ出ているのさえ気づかなかった。


 辛うじて二人を守る嘘だまりを、流れは引きちぎらんばかりに激しく揉んだ。そのため二人を挟んだままで、捩じられ波打つ嘘だまりはいまや抗する力を失う寸前。しかし、「岩を動かそうとするものは許さぬ」という強い意思は途切れることなどない。
 容赦ない流れと嘘だまりの我慢比べが続く。
 流れは嘘だまりが容易にちぎれないと知ったか、嘘だまりの端を押さえる重い岩を動かし始めた。
 体を締め付けられ、息をするのも不自由な二人は、僅かずつだが確実に体力を奪われ、全身の感覚を無くしてゆく……。
「このまま息絶えるのだろうか」
 死の恐怖が翔司を襲い、時おり意識が遠くなった。
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素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

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