見えない敵 ‐その2‐

「カメラが必要だから」と写狂老人のカメラを、ショウゾウに持ち出させようとしたのは、カメラに嘘だまりを作れる機能があると敵は知っていて、カメラが作った嘘だまりとすでに試作した嘘だまりを比較しようとしたのではないか。また、恐怖の大王が降ると決まったのであれば、神の役目を果たさなかったばかりか人間たちと交わり神の意志に背いたショウジ、ショウゾウは連れ戻されて厳しい処分を受ける可能性がある、と肖造は指摘した。
 写狂老人と肖造がもっとも重視したのは、ショウゾウの叔父を騙る男がショウジたちを連れて行こうとした丘。その近辺で神が行き来に使う道を拵えているのではないか、と。

  拵えた道を確かめるためにさっそく丘へ向かうことになり、道々、足取りの達者な老人は息を乱すこともなく翔司に話しかけた。
「時間稼ぎになるだけかもしれないが、しばらくは人間たちに神の力が及ばないようにせんといかん」
「それには、どのような方法で?」
「丘に行くと分かると思うが、あそこで【時空】の歪んでいるところがあるようじゃ。ところでお前さんは、時空という言葉を聞いたことはあると思うが」
「時空とは時間と空間で構成される四次元のこと?」
「その時間と空間で構成される四次元に、大きな質量の物が存在して影響を及ぼすと、時間と空間が歪むことは知られている。この先、四次元のことなど知らなくても困ることは無いが、知りたければアインシュタイン博士の理論が著名で、それらの解説書も多いから読んでみるといい」
「アインシュタイン……?」 老人の言うことはどこまで本当なのだろう。話が宏大すぎて理解の及ばぬ翔司は、考え込んでしまった。
「わしの考えじゃと、神は丘のどこかに質量のある物を存在させ、生じた歪みを出入り口として使っているようじゃ。それゆえ、質量のあるものさえ除けば歪みが消え、出入り口が無くなり、神であっても新たな歪みを生じさせるまで行き来が叶わなくなる」
「でも、質量のある物を捜し出すには、どのようにして?」
「お前さんに持ってきてもらったカメラを使う。まずそのカメラで、時空に歪みを与えている物体を探すことにしょう」
 老人はどのような経歴を持つ人物なのだろう? 
 いままでばかりか、先ほどの肖造との話しのやり取りや今の時空の話など、翔司の頭の中にとりとめのない疑問が次々と巡った
usodamari
 
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素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

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