嘘だまり

見えない敵 -その1-

 病院職員に扮した二人は潰れた建物から無事に逃げられただろうか。翔司は気になったが今はそれどころではないようだ。



-見えない敵-


 写狂老人の言うには、誰にも作ることができないと思った嘘だまりを敵が作れるとなると、見えないように嘘だまりで覆い隠した平屋の家を探し当てるのはいともたやすい。
 枝道を使って、翔司と写狂老人は対応策を練るため肖造のいる本屋へ急いだ。 
「驚いたじゃろう、アダムとイブの話なんか出たものじゃから。お前さんあの話をどう思った?」
 肖造との打ち合わせの合間に、老人は翔司に聞いた。
「話しに出て来た、『神は、アダムとイブの子孫が贅をつくした生活に溺れることを憂え、諸々の物を無暗に使ってはならないと申し渡した』というのは本当?」
「今となれば定かでないが、わしは、あの男たちの言う通りだと信じている」
「そうすると、昨今の異常気象や地震の頻発は、戒められた物を見境なく地中から掘り出したために起きた?」
「今はそんなにひどいのか?」
「先ほどの話しに出た、『人間どもはうねり狂う大地、定まらない風と雨、気温などに怯えなければならなくなった』そのものですから……」
「やはりそうか」
 老人はため息をつき会話が途切れると、肖造が話を継いだ。
「一説では1999年の7の月に人類滅亡に結び付く恐怖の大王が降ると言いますが、神が行き来に使う道を拵えたということは人間たちへの裁きがその頃、下るのではないかと私は思っています」
「えっ、1999年の7の月?。それは過去に一時騒がれた「ノストラダムスの大予言」の話しではないですか。それよりも、今いるのはいったい、いつの年代なんです?」
 翔司は前々からおかしいと思っていた。
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 昭和の高度経済成長が始まる以前の景色を見せられた時は、嘘だまりに張り付けた風景ときかされ納得したが、その後、平屋の家の景色、木造、モルタル塗りの病院を見ても、時代の感覚がずれたのか違和感を持たなくなってしまった。いま、「ノストラダムスの大予言」の話しが出たことで、過去にいるのではないかと頭の中が一気に混乱した。
「でも、一説の通りにならなかったと、お前さんはそう言いたいんじゃろう」
 老人はたたみかけるように言った。
「一説はあくまでも一説、事実とは違う。わしとお前さんで「その一説を少しでも遅らせようではないか」
usodamari 
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素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

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