揺れる大地 -その11‐

 写狂老人は「あのカメラに何ぞ仕掛けでもあるのか?」に答えることもなく、必要なことを聞き出して用済みになったとばかりに、男の口にふたたび風呂敷をくわえさせて結び直した。 
 出口にいる職員が放った「早くしないか!」の鋭い声。ふたたび嘘だまりの揺れが激しくなるが老人は動じることもなく、男を指さし次いで部屋の出口を指差して目配せした。どうやら男を始末するつもりらしい。
 二人で男の身体を持ち上げたがぐねぐねとして持ちにくい身体は意外と重い。ベッドから引きずり落として出口まで息を切らしながら引きずったが、男はもがき疲れたからか逆らうことがなかった。
 翔司と老人は息を整え直し、持ち上げた男を出口めがけて放り投げた。
「やっと入ったか、手間のかかる奴らめ」 
 入ったのは誰かを確かめもしないですぐに袋を閉じる気配がある。袋の中身は仲間と気付いていないようだ。
 老人はささやき声で、
「さてと、嘘だまりを出るとするか」
「出口は使えないのに、いったいどこから?」
「ベッドの下じゃよ、逃げ道に使えるのはその場所だけだ」
「いつの間にその場所を?」
 先ほどカメラを覗いて部屋の様子を探ったのは翔司なのに、覗いてもいない老人の方がいろんな情報を掴んでいた。
 二人で重いベッドをずらすと、老人はベッドの足があった辺りに手を伸ばし何かを摘まんで両手を広げた。老人の動きはさながらパントマイムを見ているようだ。拵えた出口から出た翔司に続いて嘘だまりを出た老人は、今出たばかりの空間に「ひょい」と手を伸ばして何かを摘まんだかと思うと引き延ばして捩じった。カメラのファインダーは膨らんだ風船の口を縛った形にそっくりな、嘘だまりの破れ目を塞いだ像を映し出した。 
D0445.jpg
 
usodamari
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素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

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