嘘だまり

揺れる大地 -その9-

 ショウゾウが話した「神が申し渡したこと」は事実なんだろうか?。翔司はケガを負い熱に浮かされたショウゾウのうわ言ではないかと思って写狂老人を見るが、老人の関心は他にあるようだ。すでに老人は包帯の下の人物がショウゾウではないと疑っている気配がある
 やがてショウゾウは、〔神〕自らのように断じた。
「可哀想だと思った神の温情が、あだになりました」
 翔司と老人はショウゾウの語気に押されて息を飲み込んだ。
「人間は諸々の物の使い道を知り、厳しい環境と苦役から逃れられるばかりか享楽が得られると分かって、地上に現れる僅かな量では我慢ができなくなったのです。神が懼れたように贅をつくした生活に溺れてしまいました」 
 話すのがやっとだったショウゾウが、いまはよくしゃべる。
「すでに神を畏れなくなった人間は、戒められた内容を子孫へ伝えるのを怠ったばかりか、神が埋めたものを次々と探しあてて掘り出すようになりました」
 ショウゾウの長広舌は止まらない。
「そうなると重力の均衡が破れた地球はいたる所でうねりを起こし、掘り起こした大地は荒れ果てて乾き、撒き散らされた《害》で大地は汚れ、水や大気まで汚れて育まれる作物に悪い影響を及ぼすのです」
 翔司の膝の上の、風呂敷で包んだカメラが急にもぞもぞとしだした。
「いつしか人間はうねり狂う大地、定まらない風や雨、気温などに怯えなければならなくなりました。神を畏れなくなった人間はそうなっても戒められたことに思いが至らぬのか、諸々のものを地中から掘り続けて止めようとしない……」 
D0808.jpg
 
 前触れもなく足元が波打つように揺れ出した。
 包んだカメラの動きが激しさを増し、翔司は急いで包みをほどこうとするが、足元が揺れるばかりか不安定な包みに手間どり、ようやく一方の結び目が解けたと思えば取り落としそうになるのを持ちこらえ、ショルダストラップを首にかけた。 
「ほぅれ、私の言った通りだ。人間どもに荒らされた大地が怒ってうねりだした」
 翔司と老人は急いで椅子から立ち上がった。
「やはりな、お前はショウゾウではない、何者だ!」 
usodamari
関連記事
素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply