揺れる大地 -その2-

 軽輩といえども、もはや父親のような存在のショウゾウが普段と違って家にいるのでショウジは大喜び。しかしショウゾウは叔父の言う「話し」とはどのような内容かを事前に知っていたようで、かわいいショウジが甘えかかっても浮かない顔つきで落ち着きがなかった。朝の食事を済ませ、柱に掛っただるま時計の長針が真上から真下に来て鐘を一つ打った頃、叔父が家に来る。
 ショウゾウは叔父の顔を見るなり案じた件だと悟ったようだ。お茶を出した楓が台所に下がろうとする後を追って、水屋箪笥の側まで来ると声音を低めて楓に告げた。
「急なことで戸惑うだろうが、叔父との話は家の外でするからその間に、お前はショウジを連れてすぐにこの家を出なさい」
 今までに見たこともない険しい顔のショウゾウから、出し抜けに告げられた楓はおろおろするばかり。
 その楓にショウゾウは、
「何も持たなくていいからいますぐに、ショウジを連れて逃げてくれ」
 今度は懇願するように告げ、足早に叔父のいる所へ戻るショウゾウの姿を、老人は水屋箪笥の上に置かれたままになったカメラの「目」となって眺めていた。
 当たり前のことだが、楓はなぜ逃げなければならないのかまったく分からない。しかし、ショウゾウの言葉が「家を出なさい」から「逃げてくれ」に変わったこと、ショウゾウの尋常でない様子などから、楓の知らない所で異変が起きようとしていることは察したようだ。
 困ったのはショウジで、普段は聞き分けのいい子なのにショウゾウが遊び相手をしてくれないので、「今日はカメラが要る」と言ったショウゾウを困らせようとしたのか、外へ出るときに水屋箪笥の上に置かれたカメラを持ち出し、家の外へ出たままいつまで経っても楓の所へ戻ろうとしない。天与の力を持つと言えどもそこはやはり幼子だ。そのため老人に見えるのは外の景色ばかりで、ショウゾウ、楓がこの後どのような行動を取ったかは定かでない。
 ともかく異変が起こる前触れのようなので、老人は急いで家へ戻ることにした。
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素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

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