嘘だまり

蓮の花(4)

2016年11月08日
蓮の花

その妄想とは……

マンションの販売管理会社の担当者が販売成績を上げるため標的を中年男性で田舎出身の独身者に絞った。田舎者は、 にが付くくらいだから従順で言いなりだ。払いきれなくてもローンを組ませる。ローンの保証は生命保険。

そこで担当者は、「都会で一旗上げる」と飲み屋で熱く語っていたY雄に目を付ける。

「朗報です。ある物産会社の社長が会社の販路を広げるため、やる気のある人を探しています。あなたのことを話すと大いに乗り気で、支店長として出身地の販売担当を任せてもいいということでした」

美味しい話を持ち出し、 「販路に精通すれば独立も望めます、あなたならやれる!」と、おだて上げた。

「まずは社長の信用を得ることが第一です、あなたの身元を確実にするために住まいを整えましょう。なに、支店長となればローンなどすぐに完済できますよ」

担当者は半ば強引に高額ローンを組ませ、マンションの売りつけに成功した。

故郷に錦を飾る夢に舞い上がったY雄は疑いもせず、担当者の言うままにマンションを買ったが、時が経つにつれて担当者の胡散臭さとローンの大きさに気付いて怖くなった。功を逸り縁者の誰とも相談せずに勝手に決めたことだから、田舎と連絡を取れば、払えもせぬ高額ローンを組んだことが明るみになって、「一旗揚げると言ったのに馬鹿な奴だ」と噂の的になるだろう。田舎での噂は辛辣だ、後々まで後ろ指をさされる。それが怖くて小心者のY雄は誰とも音信不通を貫いた。

一方 担当者は、契約が取れて用済みとなったY雄を適当にあしらう。

「あなたは優柔不断でいい加減だから、いい話なのに立ち消えとなってしまった」

担当者の言動は、田舎育ちの身分不相応な夢に対して容赦ない。

その後、夢を失ったY雄は不景気で仕事まで失い、次に求めた仕事も長続きしなかった。失意のどん底に落ちたY雄は都会の荒波に耐えられず身も心もボロボロになった。

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