揺れる大地 -その1-

 なんだいままで夢を見ていたのか、と思った翔司だったがそうではないようで、隣には写狂老人がいる。老人は幻を見たような翔司の肩に手を添えて、カエデのそばにある石に腰を下ろすようにすすめた。
「先ごろ降りかかった危難を払うために、間に合わせの嘘だまりの中へ敵を誘い込んだことがある。ショウジ、ショウゾウを守るには、わし一人の手に負えなくなったのでお前さんの力を貸して欲しい」
 老人は、「まだ平屋の家を嘘だまりで覆うまえのできごとになる」と、危難に遭ったときの様子を語りはじめた。


-揺れる大地-


 ショウゾウが行方不明になった日もいつもと変わらぬ平穏な朝が来た。
 その日老人は、ショウジたちを脅かす相手の情報を得たという知らせを受けて、真偽を確かめるだけだからと家にカメラを置いて出かけた。そのカメラをショウゾウが、「今日はカメラが要る」と無断で持ち出して、どのような機能があるかを試しかめたようだ。
 柱に掛っただるま時計、青さを失って久しい畳、その上に置かれた水屋箪笥、朝食の準備をしているさ中なのか、茶の間の真ん中に三人分の茶わんと箸が並べられた丸いちゃぶ台。その前に座った幼い男の子、天井からぶら下がった裸電球、白黒画面のテレビなど、ショウゾウは茶の間のあらゆる所にレンズの先を向けた。
 カメラと離れていても、老人の目とカメラの目は枝道で繋がれているので、老人はショウゾウと同じものを見ていた。
 その後、ショウゾウはまだカメラを試すつもりでいたのか、それとも被せ忘れたのか、カメラはレンズに蓋を被せないままで水屋箪笥の上に置かれた。
 その日いつもと違ったのは、ショウゾウの叔父というのが、「話がしたい」と言って家に来るというので、ショウゾウはその日の務めを休み、叔父を待っていたことぐらいだ。


DSC_0343.jpg

usodamari
関連記事
素姓乱雑
Posted by素姓乱雑

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply