嘘だまり

隠された家 -その7-

2018年06月24日
嘘だまり 0
 広場に歌声がながれる。


 ♪ おうまのおやこは なかよしこよし
   いつでもいっしょに
   ぽっくりぽっくりあるく


 ♪ おうまのかあさん やさしいかあさん
   こうまをみながら
   ぽっくりぽっくりあるく 
(おうま  作詞:林柳波   作曲:松島つね)

 子どもの歌う声と楽しそうに唱和する母親の歌声が重なり、庭をスキップする子どもをレンズの先が追った。
 どう見ても、偽りの親子とは思えない。
「しょうちゃん、カメラはもうおしまいにしましょうね?」
「うん」
 微笑ましい二人に、忘れた母と自分を重ねた翔司はこみ上げるものがある。
「わしは気にかかっていることがあるのじゃ」
 感傷にひたる翔司を浮かぬ声が現実へ引き戻したとたんに、レンズの先にキャップが被せられたのか、カメラの中は暗闇へと変わった。
「どうやら目の役目は終わったようじゃ、我々もカメラから出るとしょう」
D0429.jpg

 カメラを抜け出た翔司が目にした光景は広場に行き着いたときと同じように、何もない広場にカエデの木がまぶしい春の陽を浴びるだけで、カメラの目となって見た平屋の家や親子の姿はどこにもなかった。
usodamari
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素姓乱雑
この記事を書いた人: 素姓乱雑
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