嘘だまり

隠された家 -その6-

2018年06月17日
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 写狂老人はカメラを長く愛用しているが、カメラに泡を作る機能など備わるわけがなく、初めて見る現象。
 老人が、「このような不思議な現象を誰に教えてもらった」 と聞けば、ショウジは「か、め、ら」と答えた。
 その時老人は、「そんなばかな」と思ったが、その後カメラに話しかけるショウジを見てようやく、ショウジの言うことを信じられるようになった。だが、撮るだけだったカメラに命を吹き込み、いろんな機能を生み出したと知ってさらに驚くのはそれから後。
「わしはカメラが持つ機能の全てを知りたくなり、爺と称していつもショウジの側にいることにした。じゃから、嘘だまりに仕組んだ景色を見せてくれたのも、カメラの目となることができると教えたのも、実はショウジなんじゃ」
 日を経るにつれてショウゾウの周辺に不穏な動きが見られるようになった。神が「事のしだいによっては鉄槌を下す」と怒る、身勝手な人間たちの振る舞いを下調べするために神から遣わされた身でありながら、人間と交わるのはけしからんと言うのだ。
 写狂老人はここで、何もなかった広場にいまは平屋の家が見える訳を明かした。
「お前さんは実像と虚像を見分ける力が備わっている。ほれ、惑わされないように景色をよく見てごらん」
 レンズの先がわずかに右へ。近くの小川から水を引き込んだ洗い場が庭の隅に有り、そこから少し離れた位置で二十代とおぼしき女性が佇んでいた。今はあまり姿を見かけないエプロンにモンペ姿の女性は子どもの母親だろうか、慈愛に満ちた眼差しで子どもを見つめている。
「どうやら、見ているものが実像と分かったようじゃな」
 今見ているのが実像だとしてもすべてが分かったわけではない。
嘘だまりは何も景色を仕掛けるだけではなく、景色そのものを見えなくすることもできる。お前さんが広場を見たときに何も無かったのは、親子の住む平屋の家を嘘だまりで覆い隠してあったからなんじゃ」
 ショウゾウばかりか、ショウジが住む平屋の家にも危害が及びそうになり、写狂老人はその頃安定したこしらえができるようになった嘘だまりで平屋の家を覆ったという。
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usodamari
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