嘘だまり

隠された家 -その5-

2018年06月10日
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「いつしか神を畏れなくなった人間は、神の支配する領域まで踏み込み、自己本位で配慮の無い乱伐、乱掘、乱開発を繰り返し、環境を悪化させています」
 そのとき、肖造は同じように言っている。
「ショウジとショウゾウは、翔司と肖造?」
「そうとも言えないが…… 」
 老人はなぜか口を濁したが話しを続けた。
「そのショウジとショウゾウが、あまりにも神を畏れぬ人間の振る舞いに恐れ、おののきながらも、祖先が神との約束事を伝えなかったために、何も知らないまま裁かれる子孫を憐れに思った」
 そこで、ショウジとショウゾウはこの地に平屋の家を建て、楓という女性に幼いショウジを託した。身軽になった軽輩のショウゾウは神を畏れ身勝手な振る舞いを慎むように、人々を説いて回るなかで写狂老人と巡り合う。
  移り行く四季折々の風情に惹かれて撮りまくっていた写狂老人は、ショウゾウの説く「神の領域」が理解できた。カメラを持って野山に分け入ればたまさかに、神の領域に踏み入ったのか張り詰めた雰囲気や畏れを感じることがあるからだ。
 以後、共感した写狂老人は爺として、ショウジ、ショウゾウ、楓と一緒に、平屋の家に住むことにした。
 老人がショウジと暮らし始めて間もない頃、ショウジは老人が持つ大切なカメラを指して、「しばらく貸して欲しい」と言いだした。老人は駄々をこねる子供の言うことだからと思い渋々貸したが、ショウジはカメラを持ってどこかへ行ってしまった。老人が貸したことを後悔し始めた頃、ようやく姿を見せたショウジは、「お爺さん、写してもいい?」と聞き、レンズの先を向けてきた。老人は無邪気な子供のすることだと思い、気軽に「いいよ」と答えたが、
「次の瞬間、わしはシャボンの泡のような中にいるのを知って驚いた。そればかりか、わしを包む泡がどんどん大きくなっていくではないか。わしはどうしていいか分からなくてショウジを見れば、にこやかな顔でカメラをいじくっている」
 カメラは確かに写狂老人の持ち物だった。
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素姓乱雑
記事作成者: 素姓乱雑
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