嘘だまり

隠された家 -その4-

2018年06月03日
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 翔司の途惑いをそれとなく逸らした老人は、
「ここに住む家族との関わりになるが」
 平屋の家に住んでいる人たちに触れた。
「人間はいつも自分の都合のいいように自然を壊して環境を変えてきた。いつしか神を畏れなくなった人間は平気で神の支配する領域まで踏み込み、自己本位で配慮の無い乱伐、乱掘、乱開発を繰り返して環境を悪化させている。人間たちの身勝手さに怒った神は、事のしだいによっては人間たちに鉄槌を下すと決めた」
 同じ話を翔司はどこかで聞いた気がする。
「そこで、下調べのために、幼いけれども天与の力を持つショウジ、篤実なショウゾウを、人間たちの世界に送り込んだ。これらの話しはすべて、ショウゾウからの受け売りじゃがの」
 翔司は本屋で写真集を譲り受けると決めたときの、肖造との会話を思い出した。


「どうです、写真集は気に入って頂けました?」
 肖造は聞いた後で、写真集の発行者でもないのに、「どの写真が気に入ったのでしょう?」と、重ねて聞いた。
 翔司は写真集の頁をめくり、「散居村」の写真を捜し当てて指差した。肖造は指された写真を見て頷き、
「私も一番好きな作品です! この写真集も自慢の作品をあなたに答えていただき、満足しています」
 肖造は写真集を生き物のように表現し、
「今はこのような景観も貴重になりました。到るところで人工構造物が増え、自然との調和が乱れつつありますから」
 環境が変わりつつある現状を憂えるのだろうか、嘆くように言った。
「人間はいつも、自分の都合のいいように自然を壊し、環境を変えてきたからね」
 翔司が賛意を示すと、
「そうなんですよ」
 肖造は「的を射た答えを貰った」といわんばかりに手で両膝を打った。
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記事作成者: 素姓乱雑
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