嘘だまり

その二

2018年03月20日
ある時に
「セックスなんて、お前にはまだ早い」
「あら、早くなんかないわ。クラスにはキスどころか同級生と経験ずみの子が何人かいて、早苗なんか何にも知らないなんて馬鹿にされてるんだから。それとも聞かせるよりも、手っ取り早く誰かと経験したほうがいいというの」
「それは……」
「じゃ、聞かせるのね」
 翔平は遠い過去を引き出した。
 当時、翔平が勤めていた会社の社長は気さくな人で、グループの飲み会ともなれば社内だけでなく関連会社の人たちも呼んだ。グループの中には瑞枝もいたが、翔平の本命は関連会社のA子である。だが、A子は人気があるのか、すでに取り巻きが何人もいた。
 気後れしてA子の様子をチラチラ伺う翔平の横に瑞枝が座った。
「どうしたの、A子のことがそんなに気になるの?」
「いや、別に」
 言い当てられた翔平は言葉尻が強くなった。
 社内で瑞枝は目立たない方である。大人しいというより女としての華が乏しく惹かれるものがなかった。恋人として考えたこともない瑞枝に見透かしたようなことを言われて憮然とする翔平に
「A子のことだったら何でも知ってるわよ」
 その一言に翔平はついつられた。
 あとから思えば瑞枝は下心があったようだ。気になる翔平の様子を探れば、当然、誰を好いているかが分かる。そこで瑞枝はA子のことを詳しく調べて機会が来るのを待っていた。実際、瑞枝は翔平の問いに淀みなく答えたが酒を飲まないと話さない。
 翔平はいつの間にかずいぶんと飲んでいた。
「この後は場所を変えるから」
 そう言われて、町を歩いたことまでは覚えている。連れて行かれて入った部屋でソファーに座り、出された酔い覚ましのコーヒを飲み、そこで初めて、入ったのは店ではなく瑞枝の部屋だと気付いて翔平は慌てた。当時、瑞枝は親元を離れて一人住まいをしているのは知っている。
「帰るからタクシーを呼んでくれないか」
 翔平が頼み、その後のことは詳しく覚えていないが言い争いになり、確か、「A子とは話もできないくせに、意気地なし!」だったと思うが、瑞枝は翔平に激しい言葉をぶつけた。

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素姓乱雑
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