嘘だまり

その一

2018年03月20日
ある時に
 今日も瑞枝は泊りがけでいない。
 夫婦になって月日が過ぎ、孫もできると他人の関係に戻るようだ。体の関係は遠ざかって久しく、子供が家から離れた今は部屋が空いているので、むろん寝室は別々だ。
 幸い今日は孫が泊まりに来てくれて話し相手になってくれるらしい。孫は来年高校受験だとかで、爺ちゃんの家の静かな環境のほうが勉強に身が入るというので、自ら進んで爺ちゃんの食事の世話をかって出たという。
 仕事が終わって家に帰ると孫がいて、先に風呂へ入るように言い、早速、浴室に向かった。体を洗っていると、ふと、瑞枝のことが頭に浮かんで忌々しい気分になった。女ばかりの旅だというが、本当かどうか知れたものではなかった。それに引き換え自分はというと、仕事と家を往復するだけの情けない生活に甘んじている。
 一時は行きずりの女性と出会って恋に陥るなどと不倫も夢見た。だが世の中、甘い話はそうたやすく起きるものではない。
 爺ちゃんになったといっても翔平は60代になったばかり。未だ枯れてはいなく、風呂に入れば時々、陰茎を握って自分を慰めたりする。現にいまも陰茎に手が伸びていた。
 しばらく放心しながら手を動かしていると浴室の外で人の気配がする。いたずらをしていて見つけられた子供のような気分でドアを見れば、ガラス越しに白い姿が浮かんで見えた。ほどなくドアが開き、孫・早苗の体が浴室に入って、白い肌が明かりを照り返すのか、室の明るさが増したようだ。
 前を隠そうともしない体を見れば、幼いころには見られなかった膨らみと茂みがある。淡い茂みなのに白い体にきわだつからか、みだらな印象を与えた。思いもしない闖入者にあわてた翔平はなかば上を向いた陰茎を隠すことも忘れ、浴槽に飛び込めば派手なしぶきが辺りに飛び散った。
「爺ちゃん、今日は課外授業しょうよ」
 早苗はそれだけ言うと手早くかけ湯を済ませ、浴槽に入って、体を沈めた翔平の足をまたいで立った。息をするだけでもそよぎそうな生えそろって間のない柔らかな茂みを晒し、浴槽に体を沈めてゆけば茂みが生き物のように揺らめいた。驚きで声も出ない翔平に対して早苗は物怖じもしない。
「今日はね、お爺ちゃんとお祖母ちゃんの最初はどうだったか、詳しく聞きたいの」 
「最初って?」
「むろん初めてのセックスよ。どんなふうに始めて、どのように感じたかをすべて聞かせて」
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素姓乱雑
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