嘘だまり

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出会い -その3-

枝道に入ってそれほど遠くまで来ていないと思ったが、深い山の中へ分け入ったように、絶えずに聞こえた生活音や車の騒音などがいつの間にか途絶え、辺りは雑木が多いにかかわらず葉擦れの音や小鳥のさえずりなどがわずかも聞こえてこない。音をたてることが憚られるほど静か。「ドクッ、ドクッ」 森閑とした中で翔司の鼓動がやけに大きく聞こえた。あたり一面を覆う薄暗がりと静かさに押し潰されそうで、息苦しくなった翔司は一人...

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足音が聞こえない

足音が聞こえない

足音が聞こえない 今日もあなたの足音が聞こえない 根雪を溶かすあなたに会いたい あなたは今どこを旅していますか 春一番は来たというのに ぬるむはずの水は刃やいばのように鋭く 三寒四温の文字は凍ったまま 郵便ポストを覗いて見ても 届いた荷物の中にも あなたの便りは見えません 耳を澄ましても足音が聞こえない 日めくりをめくっても 音沙汰のない日が続くだけ あなたの足音が聞こえない 浮かれる春の足音が聞...

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出会い -その2-

軽やかな動きを一瞬に閉じ込めたような、しなやかな姿のカエデに魅せられて歩み寄り、幹を撫でれば人肌に似た温もりが内から溢れて翔司の心をなごませた。 幹の温もりに触れてふと人恋しさを覚える翔司の耳に、かすかなささやき声が聞こえた。声に誘われてカエデの後ろに目を遣れば、生い茂った雑木の間から枝道が見えてくる。時としてこの辺りを散歩道としている翔司はすべての枝道を知りつくしたつもりでいたが、辺りを覆うよう...

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見つめる先

見つめる先

見つめる先 背に積もった雪は 口を厳しく結ぶ吽像の姿を 寒さに耐える姿と重ねます 辺りは一面の白い世界 訪れる人はいなくても 見つめる先に 吽像は聞いているのです 軽やかに春獅子の舞う音色を 吽像は見ているのです 春祭りに浮かぶ人々の笑顔を  ...

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