嘘だまり

かたみ分け(6)

かたみ分け(6)

― 第二章 ― 四十九日の法要を終えても夫が亡くなったという現実を受け入れられない加奈に、疎遠となった親戚から「形見分けをしろ」という声が、突然、上った。今、加奈の手元に有るものは夫と繋がるものばかり。夫はまだ存生しているのではないか、という儚い望みを絶たれるようで、加奈は何一つとして手放したくなかったが、周りの声に抗しきれず、やむなく夫の形見分けの日を設けることにした。 その日、親戚と称する人たち...

季節外れのスイカの花

季節外れのスイカの花

忽然と現れた黄色い花。何の花だろうとよく見てみれば、植物の蔓に咲いているのが分かる。植物の葉を見て思い出した。今年の夏は異常に蒸し暑く梅雨のような日々の連続で、水分補給のために食べたスイカの種を花が咲いているあたりへ放った記憶がある。寒さに向かう季節なので、蔓がどこまで延びるか分からないが、健気に頑張っている。 秋草の間に忽然と現れた季節外れのスイカの花     ...

かたみ分け(5)

かたみ分け(5)

お茶の準備を整え終った加奈は、いつまで経っても側に来てくれない翔平に苛立った。先ほどのお面の件で、「翔平の機嫌を損ねたかな」と心配したが、家の中を眺めまわす翔平にそのような素振りは見られない。 早く話し相手になってくれるのを待ち望んでいる加奈は、心に生じたさざ波に翻弄される翔平にまで思いが及ばなかった。叔父がいたときの加奈は叔母という意識が勝り気ままに話せたが、叔母という垣根が無くなったと気付いた...

かたみ分け(4)

かたみ分け(4)

加奈の家に着いた翔平は入念に家の外を見回るなど、加奈をずい分と待たせて玄関に入った。「変わらないね」 玄関を眺めまわした翔平がつぶやいた。「そうよ、前のまま。だって変えようがないもの」 「もしかしたら、片付けてしまったと思った」 そう言われてようやく、加奈は思い出した。加奈は玄関に飾ってあるお面の置物を指し、わざと夫にも聞こえるように大声で、翔平に向けて言ったことがある。「このお面、邪魔。それに、...

かたみ分け(3)

かたみ分け(3)

翔平の返事に安心したのか、加奈は何ごともなかったように話しを進めた。「家に来るのは久しぶりね」 「そうだな、叔父さんの葬儀の帰りに、立ち寄ったとき以来かな」翔平は「叔父さんの葬儀」と言った時、僅かに眉根を寄せた。翔平にとっても、辛い思い出に違いない。「私には長い間、家に寄ってくれなかったような気がする」、加奈は感情の赴くままに言った後で自分の声音が甘えていると気付き、媚びているようだと悔いたが、幸...

夏の置き土産

夏の置き土産

10月になり一年の三分の一が過ぎた。今年は季節感がつかみにくい年で、体感で言えば晩秋のような日々が続いたと思うと、真夏のような日が訪れてみたり・・・、戸惑いを隠せない。そうやってぶれながらでも、季節の移ろいは中秋から晩秋に向かって進んでいるようで、仕事からの帰り道は、車のライト点灯が必要になり、休日にならなければ陽を浴びる時間が取れない。下の写真は先の休日に見かけたもので、収穫の終わった畑の中にあっ...