嘘だまり

愛と憎悪の狭間を漂う人達(5)

愛と憎悪の狭間を漂う人達(5)

追想(5) 当時の篤志家は、野心家で辣腕なだけに向こう気も強い。「金で動く奴の言うことが信用できるか」 臆面もなく賊に言葉を叩きつけた。賊は覆面の内で笑ったかのように顔をゆがませ、篤志家の心の内を読んだように、いきなり、いとも簡単に兄を刃物で刺し貫く。 兄は声を上げることもなく床に崩れ落ちた。 賊は、兄の血が付く刃物で篤志家の頬を叩き、「そうか、金で動く奴は信用できないか」 体の向きを変えた賊は兄...

愛と憎悪の狭間を漂う人達(3)

愛と憎悪の狭間を漂う人達(3)

追想(3) 春清に畏縮が見られない、と確かめた老人は話をまとめる。「勧める人とは私の姪だ、君も何度か会って知っているはずだ。どうするかをよく考えて私に答えをくれればいい」 春清は話しの意外な展開に混乱する。その日はどのようにして篤志家と別れ、どうして帰ったのか記憶がまったく無かった。 その日から数日、春清は煩悶と眠れない日を過ごしたが、美雪と一緒になることを諦め、篤志家の姪と一緒になるだけで出産費...

ドウダンツツジ

ドウダンツツジ

暖かい日が続くようになると時おり強い風の吹く日があり、通勤に使う道に沿って植えられたドウダンツツジが折からの強い風に千切れんばかりに揺れています 壺形のかわいらしい小花がすずなりに咲いていますRanzou 04/18/2017  今年の花は数が多いがやや小さめRanzou 04/18/2017  別名は、満点星躑躅(ドウダンツツジ)、灯台躑躅(トウダイツツジ)Ranzou 04/18/2017 ...

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愛と憎悪の狭間を漂う人達(2)

愛と憎悪の狭間を漂う人達(2)

追想(2) 事故直後の記憶が不確かな翔一だが、父の言うことに反対するほどの理由は見当たらない。父は立ち上がると隣にある台所へ足を向けながら、「何から話していいか」 そこで父は言葉を切り、台所で何かをごそごそとしていたが、戻ってきたときは少々のつまみと茶碗が二つ乗った盆、そして、酒の入った一升瓶を手にしていた。それらを畳の上に置き、あぐらで座る。「君の小さい頃から、申し訳ないが、何というか……、膝を突...

ユキヤナギ

ユキヤナギ

雪が降り積もったような白い花が咲いています。桜やチューリップと共に春の象徴花ユキヤナギ。今年もあちこちで花を咲かせています 咲き始めてから2~3週間ほど、花を楽しむことができる Ranzou 04/12/2017  日当たりと風通しの良い場所を好むRanzou 04/12/2017 ...

愛と憎悪の狭間を漂う人達(1)

愛と憎悪の狭間を漂う人達(1)

追想(1) 翔一の母は事故後、意識を取り戻すこともなく、七日間眠り続けて旅立つ。事故直後から息を引き取る日まで、翔一は呆けたように母の顔を見つめた。事故の衝撃は恐ろしいもので、その間、翔一の気力のすべてを奪い去り、腕に抱いた乳児のことさえも記憶から消そうとした。 事故直前の母の様子や行動などを、警察の事情聴取で何度も尋ねられたが、翔一には答えられる記憶がほとんど抜け落ちている。唯一、懐かしい後ろ姿...