嘘だまり

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ある街で (その1)

治夫がある街に出かけたのは気まぐれでしかなかった。 通りを歩いていると路地から少し入った所に散髪屋が見える。古くさい店だ。こんな場所で、しかも寂れた店に客が来るのだろうか?  窓越しに店の中を見てみると案の定、誰もいない。だが意外にも、店主は女性で若い。  店主に惹かれた治夫はドアを開けて中に入った。 「いらっしゃいませ」と言う声。  椅子を示されて座り、好みのスタイルを聞かれ、さっそく散髪が始ま...

大雪が止んで

大雪が止んで

降り続いた大雪がようやく止んだ朝、出かける前の雪かきからようやく解放された。23日のことだが、AM5時には積雪が2~3cmだったが一時間後には40cmという信じられない降りかたに大慌てをした。26日は穏やかな晴天に戻り心底ホッとしたものだ。 山々が朝日に照らされてゆく、昨日までの大雪が嘘のようだ Sosei Ranzou  雪に埋もれた散居村に朝日が差すのももうじき Sosei Ranzou  夕暮れともなれば・・・ Sosei Ranz...

冬の梨谷大橋

冬の梨谷大橋

一年の内で最も寒いという大寒になりました。お風邪を召さないように暖かくしてお過ごしください。 麓の城端を出た時は小雨だったのに五箇山トンネル近くになるとみぞれに変わり、五箇山側へトンネルを抜けて橋になった途端に大粒の雪が横風と共に襲いかかる。橋を渡り終えて振り返ると、トンネルの出入口は激しく降る雪で霞んで見えた。 この橋の名は「梨谷大橋」といい、国道304号線五箇山トンネル(全長3070メートル)掘削に先...

男たちが綴る曳山史

男たちが綴る曳山史

身命を賭して祭りを守った男たち今回「城端曳山史(以下曳山史と略す)」を紐解き、曳山をめぐる騒動に触れてみる。 城端駅から街中に向かう国道304号線が、大きく弧を描ききる手前に地蔵堂が有る。祀られているのは延命地蔵といい、地蔵堂の横に謂れが記してある。(下記写真)事件の発端、経過、結果を「曳山史」は各市史などを引用して詳しく述べているが、ここでは要約した内容とする。御車山の創始が慶長15年(1610)...

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かいこ(28)

- 最終章 - 窓ガラスを叩く「コンコン」という音がする。 「翔梧さん!」  あの男はまだ何かを言いたいのだ。いまだ翔梧の耳に警笛の音が残っている。 「翔梧さん聞こえますか?」  あの男の姿が残像となって話しかけた。  車のライトが襲い体が宙を舞ったのは自分か?、いや、こうして意識はあるのだから舞ったのはあの男か?、そうではなくて、兄が事故に遭ったときに見た一瞬だった。翔梧は十二年前の年明けに起きた...

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かいこ(27)

「兄さん!」 すべては瞬時のことだ。  人喰い谷で翔梧が気にした時と同じような、ガサゴソ動き回る蚕の気配が濃厚になった。 「安心しろ翔梧、いま俺が食ったのはお前の頭の中に残った翔一にまつわる記憶だ」 「お前は!」  翔梧の目前で像を結んだ男は蚕の一部を覗かせていた。 「そう、俺は人喰い谷で北さんが捜しても、最後まで見つからなかったという蚕。お前の父が、翔一とお前の、兄弟の間に存在を含めた三頭の内の...

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