嘘だまり

翔一と小雪(1)

翔一と小雪(1)

鮮やかな宝石  翔一は学校の宿題として出された設問で、解けないところを教えてもらうため、姉・小雪の部屋にいた。 「この問題だけど」「これはね、これから先に解いてゆくのよ」  小雪から問題の解き方を一通り教わり、翔一は聞いたことを頭の中でなぞろうと机の上の帳面から顔を上げた途端、本棚の隅に赤い色をした丸い物が有ると気付く。「これは何 ?」  翔一は尋ねながら手のひらに乗せて見ると直径一センチほどの丸い珊...

翔一と小雪(2)

翔一と小雪(2)

鮮やかな宝石  鮮やかな宝石を見てからというもの、翔一の女性を見る目は変化を遂げたようだ。 「それから後は、こういう順で解いて……」  いつしか翔一は俯いて説明している小雪の、襟足からうなじにかけての白い肌に目を奪われ、再び心が落ち着かなくなる。 姉の名「小雪」は、雪の降らないこの地方では思いもつかない珍しい名前。その名に違わぬ雪のように白くて滑らかな襟足に「女性」を強く意識した翔一は、手で肌に触れて...

翔一と小雪(3)

翔一と小雪(3)

あやまち  入社してひと月の息が詰まるような研修から解放されたというのに、翔一は研修時の緊張を引きずったまま、自宅で休日を過ごしていた。両親はそれぞれにどこかへ出かけたようで、翔一と小雪だけがいる家はひっそりとしている。その静かさがなぜか翔一を落ち着かなくさせた。 翔一には「社会に役立つ製品を自分の手で生み出す」という夢があり、チャレンジする項目や希望した部署をレポートにまとめて会社に提出している...

翔一と小雪(4)

翔一と小雪(4)

あやまち 急な声に驚いた翔一は片足立ちという不自然な姿勢のままで振り返った。見ると、すぐに部屋を出るつもりで開け放した戸口に小雪が立っている。「今までどこに、」 聞こうとした瞬間、小雪の背後で雷光が発し、辺りは白色に染まる。目を閉じていても黒い小雪の姿を網膜に焼き付け、変化をもたらした部屋の空間をさらに歪ませる。間をおかずに凄まじい雷鳴が腹の底まで震わせ、明かりが唐突に消えて部屋は薄暗がりとなった...

翔一と小雪(5)

翔一と小雪(5)

あやまち「たとえこの先、望まない人がこの体に踏み込んでも心の中まで踏み込ませない。そのためにも最初を委ねる人は自分で決める」  小雪は「自分で決める」を矢のように放った後、翔一を説くように、 「そう思ったものの、ふさわしい人が思い浮かばなくてずいぶんと悩んだ。けれどもハッと気が付いた。そうだ! 血の繋がりは無くても姉弟として支えあって、気心の知れた人が身近にいると」  小雪は翔一の視線を捉える。 「翔...