嘘だまり

かいこ(11)

かいこ(11)

城端から五箇山の平村(現、富山県南砺市平村)までは、1970年(昭和45年)に国道となる304号線を使う。この道路は1973年(昭和48年)にアスファルト舗装になっても依然として曲がりくねって狭く、前方から車が来てもすれ違いのできない所が何か所か残った。酷こく道どうからの脱却は1984年の五箇山トンネル開通まで待たねばならない。 だが国道に昇格する前の、この事故が起きた頃はもっと深刻だった。中でも、城...

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かいこ(12)

人喰い谷を通る時は誰もが慎重な運転をするので、今まで重大事故は起きていない。それが今回、「2名の乗った車が谷に転落」、という最悪の事故発生で地元は大変な騒ぎになった。すぐに救助隊が編成され、慌ただしく次々と現場に向かうサイレンの音が広くはない町を揺るがした。  救出に駆り出された人達は現場に到着すると次々に命綱を頼りに急峻な崖を下りた。時折、濃いモヤが薄らげば、黄泉の国へ誘うように深い谷底が顔を覗...

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かいこ(13)

〈お前は、速度を緩められなかった原因として、ブレーキペダルとブレーキ装置をつなぐ「ワイヤーの破断」、か、ブレーキ多用でブレーキ素材が耐熱温度を越えて分解、摩擦力を無くする「熱フェード現象」などで、制動不能に陥ったと推測しているのだろう 〉 今まで黙っていた「あの男」がいきなり、翔梧の耳元で囁く。 「そうではないというのか それならば、そうでないという根拠を示せ」  浮かんだ推測を男に見透かされて、...

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かいこ(14)

「翔梧は何か聞いていないか」 頼れる弟の雰囲気を感じ取ったのか、考え込んだ顔付きの翔一が長い間抱えていた疑問を打ち明けるように聞いた。 「俺の翔一という名は長男だからいいとして、俺にはお前という弟しかいないのに、なぜか二、三、四と間を空けてお前は翔梧、変だと思わないか?」  兄の様子から見て深刻な話しかと思えば、思いようでどうとでも取れることを聞かれ、翔梧は返す言葉に詰まった。 「そのことと両親の...

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かいこ(19)

北さんは、「お父さんとお母さんは失意のまま帰路についた」と話しを接ぐ。 「日中でさえも薄暗い森の中の道を、さ迷ったと思うほど中間地点の細尾峠に着くまでの道のりは長く、待ち望んだ城端の村落が山の間から見えるようになっても、どんよりとした疲れが体の奥底に沈んだままで消えることがなかったがや」  翔梧の頭の中に、どうしょうもなく後悔に苛さいなまれる父の姿が浮かんだ。  北さんの話しは間違っていないだろう...

かいこ(24)

かいこ(24)

翔梧を十三年前という過去へ引きずり込んだ、「あの男」の姿が浮かんだ。 北さんから戻った「あの男」は翔一・翔梧の兄弟に告げた。 「蚕の魂は翌年、九年目の繭を破り人魂を宿して九界へ戻る」  もはや先ほどのような朴訥さは見られず、独特の訛も今は失せ、北さんとはほど遠い雰囲気だ。 「会った最初に言った、話しておきたい内容というのは、蚕が九界に戻った後のことについてなんだ」  遠くから切れぎれに聞こえる車の...

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晩秋の五箇山路(五箇山トンネル城端側)

晩秋の五箇山路(五箇山トンネル城端側)

立冬を迎える前に11月3日、秋の五箇山路を散策してきました。 紅葉は終わりに近く、落葉が始まって冬の訪れが間近いことを感じさせます。 まずは、五箇山トンネル城端側の紅葉Sosei Ranzou   かっては細尾峠に向かう旧国道が右側に通っていたSosei Ranzou   正面に見える山を回り込んだ向こう側が通称「人喰い谷」Sosei Ranzou   人喰い谷 国道304号線にまだ五箇山トンネルがなかった頃、冬場に郵便物を届...

晩秋の五箇山路(旧道を歩く)

晩秋の五箇山路(旧道を歩く)

旧道の五箇山路そのなかでも安定した車道が残っている、梨谷大橋-細尾峠間。 その旧道を11/3日に、途中まで散策してみた。 いつもは静かな風が通るだけの道を行き交う車がちらほらと見える。 いまはすすき野になっているが、山間では貴重な水田があったSosei Ranzou   民が汗を流した地は荒れ果て、いまはすすきが風に揺れるだけSosei Ranzou   この地を耕した民人は、いまいずこにSosei Ranzou   いまは風...